ドイツからの手紙 VOL.18 〜北欧のポストから 8通目〜
終わりへ 旅の終盤になると、風は強いけれど晴天が続き、スウェーデン7番目の高さを誇るアッカ山が常に見える様になった。それまでは晴れたり曇ったりの繰り返しだったので、すっきり晴れた青空の下は歩いていても気分がいい。 なかなか近づかないアッカ山を見ながら、あの山の麓に着いてしまえば旅が終わる。と、旅の終わりを意識しだした。長い旅の最初の数日間は体が歩く事に慣れていない、だけど3日目を越えると歩ける体になってくる。一週間を越えると体の痛みもあるし、減ってきた食事の心配もある。だけど旅が日常に変わって、ゴールするのが勿体なくなるなる。これは長距離を歩いた人はきっと感じていると思う。 ダイエット? 今回の旅では余裕を見て2週間分の食事を持ち歩いていた。朝と昼は軽くて栄養が取れるグラノーラなどをカップ一杯ずつ。夜はパスタや袋ラーメンだった。足りないカロリーと引き換えに、お腹周りの肉がどんどん落ちて行った。 サーレクへ 旅を終える前にサーレク国立公園に入る事にした。いままで歩いていたパドィエランタラーデンは、このサーレクの周りを歩くルートだ。「ニルスの不思議な旅」にもこのサーレクの事が少しだけ書かれている。実はスウェーデンの20クローネ紙幣には「ニルス」が印刷されている。 サーレクと今まで歩いたルートとの違いは「道が無い」ことだ。もちろんヒュッテも無く、サポートを受ける事は出来ない。だから立ち入る人は少なく、本当の自然が広がっている。 実際、足を踏み入れると、トナカイの足跡かヒトの足跡か分からない筋が無数に広がっていた。いままで雪山以外で踏み跡の無い自然の中を歩いた事はなかったけれど、目の前に広がる広大な草原を見つめていると「まあ、気張らずにおいでよ」と自然が語りかけてくれる様な気持ちになった。 自由だと思っていたこれまでのトレイルも、結局は出来上がった道を歩いていた。自分の歩きたいルートを、自分の行きたい所まで歩く。これが現代ではめったに出来ない本当の旅なのかもしれない。 [...]