実は色落ちするのはデニムだけではなく、Tシャツであれニットであれ染色された糸で織られた衣類は着用を繰り返していくと色落ちします。もちろん洗濯でも色落ちするし、紫外線による色褪せ(=日焼け)でも色落ちします。
最近のカラーパンツによく見られる製品染めは、白(生成り)の生地で作った白いパンツを製品のかたちで染料に入れて染めており、糸の状態で染めて織り上げたものと比べると色落ちが早い特徴があります。その代わり、均一でないムラ感ある染め上がりが独特の「味」となり、生産効率も良いことからよく使われる染め手法です。
一方デニムはというと、もちろん糸の状態でインディゴ染料で染めています。面白いのは、インディゴ染めされた糸を使うのは表側にくる縦(タテ)糸のみで、裏側になる横糸は染めていない生成りの糸で織り上げらることです。なのでデニムは裏返すと白いのです。
そしてデニムを染めるインディゴ染料、実はかなり色素が定着しにくい染料で、しっかり濃い色に染め上げるには何度も何度も繰り返し染め工程を行う必要があり大変な手間がかかるのです。効率化を求めて別の染料で下染めなどする場合もありますが、基本的には何度も浴槽を潜らせながら少しずつ濃い色に染めていくのです。
これによってどんな事が起こるかというと、デニムの縦糸の断面をご覧いただくと一目瞭然なのですが、糸の芯まで染まっていないのです。これを「芯白(シンジロ)」とか「中白(ナカジロ)」と言います。芯が染まらず白いままという事は、穿き込んで外側のインディゴ染料が落ちてくると芯の白い部分が出てきて色落ちするのです。なのでのっぺりと色落ちせず、よく擦れる部分と擦れにくい部分のメリハリが効いて立体感が生まれるのです。これがデニムの色落ちの秘密です!
また、糸そのものや織り上げた生地がフラットな状態よりも、太さにムラがあったりザラつきがある不均一な状態のほうが色落ちにメリハリが出やすいと言えます。最新のハイテク織機で織った生地もきれいで良いですが、デニム本来の味のある色落ちを楽しみたい方は旧式の力織機で織ったビンテージタイプのデニムを選ぶとより色落ちを楽しめると思います。
今日はデニムの色落ちの話しでした。マニアックな話にお付き合いいただきありがとうございました。